経験を受け継ぎ、技術を伝え、知識を継承する…
いわゆる「継承」の概念は、日本の家族経営の企業において非常に重要な柱となっています。代々受け継がれる価値観は、まさに神聖なものとされています。多くの企業が100年以上の歴史を持つ中、「家(いえ)」という概念が企業の名誉とアイデンティティを守ることの重要性を強調しています。そのため、後継者にかかるプレッシャーは非常に大きく、単にビジネスを引き継ぐだけでなく、自分自身の人生を超えた「遺産」を守り続ける責任があります。
世代交代
私たちは地方を訪れる際、6代目、7代目、時には10代目の経営者と出会うことがあります。長い年月を経てもなお続く事業に、いつも感銘を受けます。しかし、もし子どもが別の職業を目指した場合、どうなるのでしょうか?
先日、宮崎県都城市を訪れた際、私たちは 柳田酒造株式会社 の5代目である柳田さんにお会いしました。この酒造は1902年に彼の先祖によって創業されました。長年にわたり会社を経営し続けた柳田さんですが、次の世代への引き継ぎは避けられない問題です。いずれ「次は誰が継ぐのか?」という問いに直面します。ここから先のストーリーは、まるで日本の連続ドラマのような展開でした。


愛する娘のために…
実は、柳田さんには娘さんがいます。しかし、彼女には彼女の夢があり、現時点では家業を継ぐ意思はありません。「あぁ、どうしよう…」と親なら誰しも感じるであろうジレンマです。どうにかして家業を終わらせず、娘の気持ちを少しでも変える方法はないだろうか…。
そこで、柳田さんはあるユニークなアイデアを思いつきました。彼は卓越したエンジニアでもあり、焼酎製造における細かな技術や製造工程のコントロールを徹底しています。しかしその技術力を活かし、彼の本当の目的は「娘にとって、製造工程をもっと簡単で負担の少ないものにすること」でした。「もしかしたら、これなら娘もやってみたいと思うかもしれない…」。
彼はさまざまな製造ツールを自ら設計し、重労働を減らす仕組みを次々と生み出しています。その背景には、「もしかすると、いつか彼女が気持ちを変えて継いでくれるかもしれない」という父親の切実な願いが込められていました。まるで「日本版ホームドラマ」を見ているような、心温まるエピソードです。
夢は人それぞれ
もちろん、だからといって彼女がすぐに「やります」と答えるとは限りません。しかし、柳田さんは彼女が万が一「やりたい」と思ったときに、すぐに始められる環境を作ることに全力を注いでいます。最終的にこの決断は娘さん自身に委ねられていますが、私たちはこのストーリーの結末を見届けたい気持ちになりました。
私たちは今回の訪問を通して、家族経営の企業における「継承」の重み、そして次世代へと繋ぐ思いの深さを改めて感じました。




最後に、温かく迎えてくださった柳田さん、製造工程の説明、そして美味しい試飲体験まで、本当にありがとうございました。特に炭酸水と焼酎を混ぜる際の「注ぎ方」のデモンストレーションは、まるでお茶の作法を見ているようで感動しました。(もちろん、適量での飲酒は大切です!)
皆さんもぜひ、彼らの公式フランス語ページをご覧ください!
👉 https://www.yanagita.co.jp/fr/index.html
